琉球新報コラム「月が好きになった」

2016.05.20 /  2020.02.04

琉球新報コラム 落ち穂(2016年5月17日)
第10回「月が好きになった」
 
満月が近づきつつある此の頃、夜な夜な星の光は消えていき、明るさ増す月の光が辺り一面に広がるサトウキビ畑を照らしていく。気付けば、自分の影が足元から伸びている。周りに街灯が無い、石垣島のとある畑の夜の光景だ。
月明かりの無い夜は、自分の手の平が見えない程の暗闇に包まれ、満月の夜には本が読める程明るくなる。1ヶ月かけてこれ程までに変化する自然の夜の明暗差のグラデーションを、街明かり溢れる東京で暮らしてきたこれまでの人生で知る由もなかった。八重山には「月ぬまぴろーま節」という、月が真昼間のように明るい様を歌った民謡がある。石垣島に移住した今ではその意味を肌身で実感している。
日本では月の満ち欠けによって風情ある呼び名が付いている。十五夜の満月の次の夜は十六夜(いざよい)といい、満月よりも月の出が遅れることから、「月が出るのをためらっている」という意味でそう呼ばれている。十七夜はさらに月の出が遅れ、「今か今かと立って待つ」ことから立待月という。十八夜はまたさらに遅れ、立って待つのは辛いから「座って待とう」ということで居待月といい、もっと遅れる十九夜になると「寝ながら待とう」と寝待月という。昔の日本人は、どれだけ月が出てくるのを待ち侘びていたのかと思う。
そして、日本の古い和歌には、月の美しさを歌った歌が極めて多くあり、月を愛でる文化が根強くあった。反面、星の美しさを歌った歌はほとんど見られない。人工の明かりのない昔であれば、満天の星空や天の川がとても綺麗に見えたはずである。以前はそれを不思議に思っていたが、石垣島で暮らすようになって、最初は星空の邪魔をする存在だった月明かりが、本当は闇を照らし夜の暮らしを豊かにしてくれるとても有難い存在だったであろう、昔の人の心中に去来する思いがした。
街明かりの少ない、暗い自然の夜空が保たれている八重山諸島では、星空の美しさだけではなく、昔の人たちが長い歴史の中で営んできた月が司る自然の夜の感覚、情緒を現代に生きる私たちに呼び起こさせてくれる。
 
星空ツーリズム社代表
上野 貴弘
 
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